愛知県の衝突事故事件 緊急避難の弁護士

2014-12-22

愛知県の衝突事故事件 緊急避難の弁護士

Aさんは、仕事でトラックを運転中、人身事故を起こしたとして愛知県警一宮警察署取調べを受けています。
Aさんの話によると「センターラインをはみ出して走行してきた対向車を避けるために車線変更したところ、後続車にぶつかってしまった」そうです。
当事件は、年内中に名古屋地方検察庁に送致される予定です。

※今回は、昭和45年5月1日の大阪高裁判決を参考にしています。

~交通事故事件で緊急避難が認められた事例~

今回参考にしたのは、控訴審で被告人が主張する緊急避難の成立が認められ、逆転無罪判決となった事案です。
緊急避難というのは、自分や他人の生命などが侵害されまたは侵害されそうな時に、それらを守るためにやむを得ず他人の利益を侵害する行為のことです。
緊急避難が認められるためには、3つの条件が揃わなければなりません。

●現在の危難がある
 自分や他人の生命・身体・自由・財産が侵害されたあるいは侵害されそうになっている状態のことを指します。

●緊急避難をしようという意思がある
 自分や他人の生命などを守るために、やむを得ず緊急避難行為をしようという意思のことです。

●相当性のある緊急避難行為
 相当性が認められるためには、「緊急避難行為以外に方法がなかったこと」「侵害した利益が守ろうとした利益を上回らないこと」が必要です。

緊急避難が成立する場合、他人の身体などを傷つけたとしても犯罪にはなりません(刑事裁判では無罪となります)。

緊急避難行為は、正当防衛行為と似ています。
しかし、以下の点で異なります。
・正当防衛は違法な行為(例‐犯罪行為)に対してしかできないのに対し、緊急避難の場合はそのような制限がない
→自分などの利益を守るためであれば、いつでも可能
・正当防衛は他人の利益を侵害しようとした人に対してしかできないのに対し、緊急避難の場合はそのような制限がない
→自分などの利益を守るためには、第三者の利益を害することも可能
・正当防衛は必要最小限の行為であればよいのに対し、緊急避難の場合は認められる範囲がより狭い
→「緊急行為以外に方法がなかったこと」「侵害した利益が守ろうとした利益を上回らないこと」が」必要

昭和45年の大阪高裁判決の事案で被害者は、加療約3週間のケガをしていました。
そのため、被告人には人身事故に関する刑事責任が認められる可能性がありました。
しかし、大阪地裁は、「対向車を避けるために車線変更したところ、後続車とぶつかってしまった」という被告人の主張を認め、犯罪の成立を否定しました。
その結果、逆転無罪となったのです。

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