【事例紹介】軽トラックの荷台を掴まれた状態で発進したひき逃げ事件②
【事例紹介】軽トラックの荷台を掴まれた状態で発進したひき逃げ事件②
前回のコラムに引き続き、軽トラックの荷台を掴まれた状態で発進し、逃げ去ったとしてひき逃げの疑いで捜査されている事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
(前略)京都府向日市寺戸町の府道交差点で、アルバイトの女性(46)=同市=が、軽トラックとみられる車に引きずられて顔面などを強打する事件があった。女性は病院に搬送されたが重傷とみられ、車はそのまま逃走した。京都府警向日町署がひき逃げ事件として捜査している。
向日町署によると、この直前、交差点の横断歩道を渡っていた女性と横断歩道前で停止した車の運転手の男が、何らかの理由で口論となった。女性が車の荷台をつかんだところ、車はそのまま発進。女性を数メートル引きずり逃走したという。
(後略)
(4月22日 産経新聞 「口論の末、荷台つかんだ女性引きずられ重傷 軽トラ?が逃走」より引用)
事故と傷害
車で人にけがを負わせてしまった際に成立する法律として、過失運転致傷罪を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
過失運転致傷罪は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条で規定されており、有罪になると、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金が科される犯罪です。
また、傷害の程度が軽い場合には情状により刑が免除される場合があります。
過失運転致傷罪は、簡単に説明すると、運転をするのに必要な注意をしないで人にけがをさせた場合に成立します。
また、過失運転致傷罪は名前に「過失」とついているとおり、注意を怠ったがために起きてしまった事故の場合に成立しますので、故意に事故を起こしてけがを負わせた場合には、過失運転致傷罪は成立しません。
今回の事例ではどうでしょうか。
報道によると、女性が荷台を掴んでいる状態で軽トラックを発進しさせたようです。
発進させる前に容疑者が女性と口論になっていたと報道されていますので、発進させる前に女性が軽トラックの近くにいないか、発進させてけがを負わせないか確認する必要があったと考えられます。
容疑者が不注意により荷台を掴んでいる女性に気づかず、軽トラックを発進させることで女性にけがを負わせたのであれば、過失運転致傷罪が成立する可能性があります。
今回の事例では荷台を掴まれていることを気づかなかったものと思われますが、もしも荷台を掴んでいる女性を振りほどこうと軽トラックを発進させた場合には、過失運転致傷罪は成立するのでしょうか。
刑法第204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
傷害罪を簡単に説明すると、暴行などによって人にけがを負わせた場合に成立します。
今回の事例では、女性が荷台を掴んでいる状態で軽トラックを発進させたと報道されています。
人が荷台を掴んでいる状態でいきなり発進させれば、その人が荷台に引っ張られてこけてけがを負う可能性や、事例のように地面にひきづられてけがを負う可能性が考えられます。
人が荷台を掴んでいる状態での発進はけがをさせる可能性が高く、危険な行為だと言えます。
もしも容疑者が女性が荷台を掴んでいることを知りながら軽トラックを発進させたのであれば、傷害罪が成立してしまうかもしれません。
また、軽トラックでひきずる行為は、けがで済まずに亡くなってしまう可能性も考えられるほどの危険な行為です。
もしも殺意があったと判断された場合には、殺人未遂罪に問われる可能性も考えられます。
荷台を掴まれていることに気づいていなかったとしても、直前で口論になっていたと報道されていることから、警察官などに気づいていながら発進させたのではないかと疑われる可能性があります。
取調べの際に、気づいていながら発進させたと認めるような供述をするように圧力をかけてくるかもしれません。
誘導に乗ってしまうことで、殺人未遂罪で起訴されるなど、不利な状況に追い込まれる可能性があります。
取調べで作成される供述調書は後から訂正することは容易ではありませんので、取調べ前に対策を練っておく必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、無料法律相談を行っています。
弁護士に相談をすることで殺人未遂罪などの成立を防げる場合があります。
刑事事件や交通事件で捜査を受けている方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。