高速道路でのスピード違反で人身事故
高速道路でのスピード違反で人身事故
今回は、スピード違反で危険運転致死傷罪に問われた事件の弁護活動につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
Aさんは大阪府和泉市内の、制限速度が時速80キロメートルの高速道路において、自動車を時速200キロメートルで走行させていたところ、左カーブを曲がり切れず、対向車線に飛び出してしまいました。
さらに、対向車線を走っていた車の右横部分に衝突してしまい、衝突した車に乗っていたVさんら5名のうち3名が死亡、2名が重傷を負いました。
Aさんも重傷を負い、病院に搬送されました。
大阪府和泉警察署は、Aさんの回復を待って、危険運転致死傷罪の疑いで逮捕する方針です。(フィクションです)
~Aさんに成立する「危険運転致死傷罪」とは?~
制限速度を120キロもオーバーするスピード違反をして事故を起こしたAさん。
危険運転致死傷罪に問われる可能性が高いです。
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条2号は、「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」を行い、「人を負傷させた者」を15年以下の懲役に処し、「人を死亡させた者」を1年以上の有期懲役(上限は余罪がなければ20年)に処するとしています。
上記の運転を行うことによって、被害者に傷害を負わせた場合が危険運転致傷罪、被害者を死亡させた場合が危険運転致死罪、両方を合わせて危険運転致死傷罪といいます。
時速80キロメートル制限の高速道路において、時速200キロメートルで走行すると、正しくハンドルを操作してカーブを曲がることが著しく困難になることは明らかです。
これにより対向車線に飛び出してVらの乗車する車に衝突し、同人らを死傷させてしまったAさんに危険運転致死傷罪が成立する可能性は極めて高いと思われます。
~Aさんが逮捕されていないのはなぜか~
犯罪をしたと疑われている人(被疑者)を逮捕するためには、「逮捕の必要性(罪証隠滅、逃亡のおそれ)」が必要です。
明らかに逮捕の必要性がないのに、被疑者を逮捕することは違法です。
Aさんはケースの事故で重傷を負っているため、逃亡したり、証拠を隠したりするなどのおそれがないと判断されたものと思われます。
また、逮捕・勾留する場合においては、被疑者を拘束できる時間に限りがあります(捜査段階で最長23日間)。
Aさんが取調べに応じられない状態であるのに逮捕したところで、必要な事情を聞きだすことができまないまま、タイムリミットが来てしまう可能性があります。
治療の必要性から、退院させて留置場に入れることができないといった事情も考えられますので、Aさんを事故直後の段階で逮捕しなかったのは、妥当であると考えられます。
~逮捕後はどうなるか?~
Aさんが取調べや留置場での生活に耐えられる状態まで回復した後、逮捕される可能性があるでしょう。
逮捕・勾留されると、先述の通り、捜査段階で最長23日間、身体拘束をされます。
このうち、最初の3日間を逮捕期間、その後の20日間を勾留期間と呼びます。
ケースの事件は、捜査上のミスや、事実認定に用いる証拠に問題がない限り、実刑判決となる可能性が高いでしょう。
さらに、危険運転致死罪は裁判員裁判の対象事件となります。
さらに、裁判員がいることによる心理的な負担もあります。
このような手続に対応するには、弁護士のサポートを受けることが大切です。
~裁判に向けた対応~
今回のケースでは、被害者が多く、120キロもオーバーしていたという悪質性もあるので、かなり長期間の懲役刑を言い渡されることも想定されます。
まずは、事件を起こしてしまったことを真摯に反省しなければなりません。
また、Vさんらの遺族に謝罪し、生じさせた損害を賠償する必要もあります。
Aさんがきちんと任意保険にも入っていれば、保険により上記の損害を賠償できる場合があります。
Aさんが「真摯な反省」をしているかどうかを判断するために、捜査時の供述が考慮される場合もあります。
捜査段階で被害者を侮辱したり、自身の行為を正当化するような供述をしていると、裁判で反省の弁を述べても、信用されなくなるかもしれません。
自ら反省文を作成しておくといった対応も重要となるかもしれません。
捜査段階でAさんが行わなければならないことはたくさんあります。
弁護士のサポートを受けながら、事件解決を目指していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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