ひき逃げ事件で犯人隠避

2020-10-03

ひき逃げ事件で犯人隠避罪に問われるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、前日に千葉県匝瑳市の交差点で起こしたひき逃げ事故の件で、千葉県匝瑳警察署に出頭しました。
Aさんは、警察官に対して、「自分が運転して、歩行者とぶつかったが怖かったのでそのまま走り去った。」と話しています。
しかし、Aさんに対する取調べが進むにつれて、Aさんの供述が二転三転するようになったため、不審に思った取調官が問いただしたところ、「社長に身代わりを頼まれた。恩があったため断れなかった。」と供述しました。
匝瑳警察署は、Aさんの社長Bさんをひき逃げ事件の被疑者として逮捕し、Aさんを犯人隠避の疑いで逮捕しました。
(フィクションです)

犯人隠避罪

第103条 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

刑法第103条は、犯人の発見・身柄の拘束を妨害する犯罪(犯人蔵匿等罪)について規定しています。

◇客体◇

本罪の客体は、「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者、または拘禁中に逃走した者」です。

「罰金以上の刑に当たる罪」というのは、罰金以上の刑が規定されている罪のことを指します。
「罰金以上」とは、罰金を含め、罰金刑よりも重い刑、つまり、死刑、懲役、禁錮です。

「罪を犯した者」についての理解は、様々な立場から議論されているところですが、判例は、真犯人の他に、犯罪の嫌疑をうけて捜査の対象となっている者も含むとする立場を採用しています。

上記事例では、社長のBさんが「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」に該当するかどうかが問われるわけですが、Bさんがひき逃げ事件を起こしたのであれば、その事案によって異なりますが、少なくともBさんに対して成立し得る犯罪は、過失運転致死傷罪(または危険運転致死傷罪)、そして道路交通法違反(救護義務違反・報告義務違反)となるでしょう。
過失運転致傷罪の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金です。
つまり、Bさんは「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」と言えるでしょう。

また、「拘禁中に逃走した者」とは、既決・未決を問わず、法令により拘禁された者で逃走した者のことをいいます。

◇行為◇

本罪の行為は、犯人等を「蔵匿」し、「隠避」させることです。

「蔵匿」するというのは、官憲による発見・逮捕を免れさせるために場所を提供して匿うことです。
隠避」させるとは、蔵匿以外の方法で官憲の発見・逮捕を免れさせる一切の行為のことをいいます。
これには、次のような行為が該当します。
・逃走車の留守宅の状況や官憲捜査の形勢を探査して知らせること。(大判昭5・9・18)
・犯人に特定の地域に逃走するように勧告すること。(大判明44・4・25)
・他人を身代わりに自首させること。(最決昭36・3・28)
・身代わりに犯人として自首すること。(最決昭35・7・18)
・犯人の所在について警察官に虚偽の陳述をすること。(大判大正8・4・22)

上記事例では、AさんがBさんの身代わりにひき逃げ事件の犯人として自首したのですから、犯人を「隠避」させたと言えるでしょう。

◇故意◇

本罪の故意は、「被蔵匿者・被隠避者が罰金以上の刑に当たる罪を犯した者、または拘禁中に逃走した者であること」を認識し、かつ、これを「蔵匿・隠避すること」の認識です。
故意がなければ本罪は成立しません。

「被蔵匿者・被隠避者が罰金以上の刑に当たる罪を犯した者、または拘禁中に逃走した者であること」の認識については、単に、実際上、罰金以上の刑に当たる犯人(例えば、殺人犯人や窃盗犯人など)であるという認識で足りるとされます。
それは、「罰金以上の刑に当たる罪の犯人であること」を認識することは、一般人にとっては判断が難しいからです。

Aさんは、社長から身代わりを頼まれたと供述しており、Bさんがひき逃げ事件を起こしたことを認識していますし、Bさんの身代わりとなって警察署に出頭することも認識していますので、故意は認められるでしょう。

犯人自身は、本罪の主体から除外されています。
犯人が自己蔵匿・自己隠避することは無理もないという理由から、それらの行為は処罰されません。
しかし、犯人が第三者に自己を蔵匿・隠避するよう教唆した場合には、犯人蔵匿等教唆罪が成立する可能性があります。

犯人の親族が本罪を犯した場合、期待可能性が低く、責任が減少することを考慮して、その刑が免除されることがあります。

犯人隠避で逮捕された場合、共犯事件であるため逮捕後に勾留される可能性があります。
早期に弁護士に相談・依頼し、早期釈放・事件解決を目指しましょう。

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