地方公務員を目指す大学生が人身事故を起こし取調べ

2021-11-09

今回は、地方公務員を目指している大学生が人身事故を起こしてしまった場合の弁護活動につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~
Aさんは、県道を自動車にて走行中、道路を横断している歩行者Vに気付かず、慌ててブレーキをかけましたが、Vと衝突してしまいました。
Vは衝突した際の衝撃で転倒し、怪我を負った模様です。
Aさんはすぐに警察、救急車を呼び、Vを救護しましたが、Vの容態は不明です。
後程、Aさんは警察に連れて行かれ、取調べを受けましたが、両親が身元引受人となって自宅に帰ることができました。
Aさんは今後どうなるのでしょうか。(フィクションです)

~Aさんに成立しうる犯罪は?~

ケースの場合、過失運転致傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)の成否が問題となるでしょう。

※自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
(過失運転致死傷)
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

自動車を運転中、運転操作を誤ったり、よそ見をしていたなどの理由で、被害者に怪我を負わせてしまう場合が典型例といえます。
Aさんは道路を横断するVの存在に注意し、事故を起こして怪我をさせることのないように自動車を操作すべきであったにもかかわらず、Vの存在に気付かず、これと衝突して怪我を負わせてしまっています。
上記の事実関係によれば、Aさんに過失運転致傷罪が成立する可能性は十分ありえるということができるでしょう。

~今後の捜査~

Aさんは逮捕されず、自宅に帰ることができたので、在宅で捜査を受けることになるでしょう。
この場合は、警察へ何度か出頭し、取調べを受けたり、実況見分に協力する、という期間が続くと思われます。

警察での捜査が節目を迎えると、事件が検察へ送致されることになります。
検察では、検察官の取調べを受けることになります。
そして、最終的に検察官がAさんを起訴するか、あるいは不起訴とするかを決定します。

在宅捜査の場合であっても、呼出しを正当な理由なく拒否すると、逃亡のおそれがあると判断され、逮捕されてしまうことがあります。
逮捕、勾留されると、捜査段階において最長23日間もの身体拘束を受けるので、Aさんの社会生活に及ぼす悪影響は計り知れません。
逮捕されるリスクを考えると、呼出しには応じた方がよいでしょう。
呼び出された日程に差し支えがあれば、かならず捜査機関にその旨を話し、出頭する日程を調整しましょう。

~Aさんが注意すべきこと~

Aさんは大学で地方公務員を目指して勉強しているとのことですが、地方公務員法第16条は、地方公務員の任用にあたり、欠格条項を設けています。
同法同条第1号によれば、「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」は、「条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない」とされています。

ところで、過失運転致傷罪の法定刑には「禁錮以上の刑」が含まれています(前記参照)。
もし起訴され、禁錮刑を言い渡されてしまうと、当分の間、地方公務員になることができなくなってしまいます。
Aさんは大学で地方公務員を目指し勉学に励んできたのですから、ケースの事件によって進路の実現を諦めざるを得ない事態が生じることは回避したいところです。

もし、①不起訴処分を獲得できた場合や、②起訴された場合であっても、罰金刑に留まった場合には、前記の欠格条項に該当しないので、引き続き進路の実現に向けて注力することができます。
Vの怪我の状況にもよりますが、もし比較的軽傷であれば、Vと示談をするなどの弁護活動を尽くすことにより、不起訴処分や罰金刑に留まる判決を獲得できる可能性もあります。

ケースのような事件を起こしてしまった場合は、まず刑事事件に詳しい弁護士と相談し、今後の弁護活動についてアドバイスを受けましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
過失運転致傷事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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